債務整理一般

新型コロナウィルス緊急事態宣言に伴う債務整理業務

新型コロナウィルス感染症に伴う緊急事態宣言債務整理業務の動向について

当事務所では新型コロナウィルス感染症による債務整理も積極的に受任しておりますので是非ご相談ください。

新型コロナウィルス感染症に伴う緊急事態宣言によって、債務整理業務も影響を受けております。そこで、任意整理、破産等法的整理、消滅時効援用、過払金請求の現時点での業務の影響について解説したいと思います。

なおコロナウィルスにより、債務整理をするかどうかを迷っている方は下記記事も参照ください。一般的な借金の対応策をまとめております。

http://sapporo-saimu.com/blog/新型コロナウィルスの影響を受けた方の債務整理/

①任意整理

任意整理に関しては、多少処理速度は遅いですが、問題なく処理できます。債権者側も今回の緊急事態宣言により、人員を減らしており、和解交渉をしようとして担当者が当日不在のケースもありますが、翌営業日には出勤しているケースが大半です。取引履歴の開示についても、あくまで個人の感覚ですが、そこまで遅くなっているようには感じません。なお和解条件に関しては、各社今回の件による変化はほとんどありません。

②破産等法的整理

今回の件で、事務処理に関してかなり事務処理に影響を与えています。現在原則裁判手続きが停止しており、破産手続きも例外ではありません。現在裁判所は申立受付をしておりますが、原則その後の処理が進みません(下記札幌裁判所ホームページより。なお裁判所のHP上は5月6日までですが、緊急事態宣言の延長に伴って令和2年5月13日現在の対応もこのようになっております。)
https://www.courts.go.jp/sapporo/vc-files/sapporo/file/minji4bu_hasansaiseikakari_oshirase.pdfよって,現状は申請の準備期間となります。

③消滅時効援用

消滅時効の援用に関して、ほとんど影響はありません。取引履歴は問題なく取得できますし、
債務名義の有無の確認も問題ありません。

④過払金請求

取引履歴は開示してもらえますので、過払金の額の計算は問題なくできます。ただ交渉には支障があります。まず裁判に頼らない任意和解ですが、会社によっては過払い金の和解担当部署の人員を大幅に減らしている会社もあります。そのような会社は対応が遅くなることが想定できます。
また訴訟による解決ですが、上記で述べた通り、現在裁判手続きが停止しており、裁判が開催できない状況となっております。今後緊急事態宣言が解除されない限り裁判が開かれない可能性があり、過払金請求に関しては解決が遅くなる可能性があります。訴訟でこのような対応が採られている以上任意での和解も条件があまり期待できないかもしれません。

⑤最後に

現状、緊急事態宣言に伴い業務に支障はありますが、債務整理手続きができないわけではありません。借金問題は放置すると状況が悪化しがちです。このような状況であっても、できる限り最善を尽くしますので、是非当事務所にご相談ください。

新型コロナウィルスの影響を受けた方の債務整理について

新型コロナウィルス感染症の影響を受けた方の債務整理について

現在当事務所では、新型コロナウィルス感染症の影響による債務整理を積極的に受任しております。もしお困りでしたら、是非お気軽にご相談ください。

ただ専門家に依頼しようかを迷っている方もおられると思います。通常の場合、なるべく専門家に依頼した方がいいと思いますが、今回の状況は通常の債務整理と異なる点があります。特に信用情報(いわゆるブラックリストに載ること)を気にされる方は、ご自身で交渉したほうがいいかもしれない場合があります(理由は後述します。自身の状況がよくわからないなどの場合は、依頼するかは別として、一度専門家に相談したほうがいいかもしれません)。

以下新型コロナウィルスにより債務が返済できなくなった場合の対応について考えてみたいと思います。返済に困ったときすべきこととして以下の点が挙げられます

① 返済が出来なくなりそうになった時点で、早めに金融機関もしくは専門家に相談すること。払えないからといって放置は絶対しない。
② ご自身で債権者と話し合いをする際には、信用情報がどうなるのかをしっかりと確認すること
③ 金融機関(特に消費者金融)との交渉がうまくいかないときや、今後収入の回復の見込みがなく、契約通りの返済ができそうにない場合は、自分で解決しようとせず、専門家に依頼すべき

では一つずつ解説していきます。

① 返済が出来なくなりそうになった時点で、早めに金融機関もしくは専門家に相談すること。払えないからといって放置は絶対しない。

現時点(2020年5月11日)において、借金が返せない場合の交渉を通常時に比べると金融機関も柔軟に認めています。例えば先日金融庁から以下の通達がなされました。

金融庁ホームページより
https://www.fsa.go.jp/news/r1/ginkou/20200407.pdf

上記の内容は経営者向けの貸し出しも含まれてますが、個人向けの貸し出しも含まれております。重要な点は次の二点です(上記「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を踏まえた資金繰り支援について(要請)から抜粋)。

・住宅ローンや個人向けローンについて、これまでの要請を踏まえ、さらに個人顧客 のニーズを十分に踏まえた条件変更等について、迅速かつ柔軟な対応すること。ま た、個人向けローン等の保証業務を行っている場合においても、こうした趣旨等を 踏まえた対応に努めること。
・新型コロナウイルス感染症により影響を受けた顧客から支払猶予等の申出を受け、 一定期間猶予した場合には、信用情報機関に延滞情報として登録しないこと。

これらはあくまで要請なので、必ずしも柔軟な対応をしてもらえるわけではないのですが、金融機関はたいていの場合、ヤミ金など違法な業者を除いて、まずこの通達を考慮します(なお筆者は、この通達後に任意和解後の支払い猶予の交渉をしました。大手消費者金融だけでなく、いわゆる街金も柔軟に対応してもらえました)

上記通達をもとに各金融機関も柔軟に対応しております。例として住宅金融支援機構(住宅ローンの金融機関)があります。

住宅金融支援機構ホームページより

https://www.jhf.go.jp/files/400352693.pdf

ちなみに民間の住宅ローンはこちらの記事が参考になります

東京新聞ホームページより

https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020051001001210.html

次に信用情報については、信用情報機関が以下のように声明をだしています。
通常の滞納に比べ、柔軟に対応しております。

CICホームページより

https://www.cic.co.jp/important/2020/04/post-6.html

JICCホームページより

https://www.jicc.co.jp/attention/information/?info=11

なお信用情報機関に関しては当事務所ブログの次の記事を参照してください

但し、金融機関に連絡せず、遅滞を放置していると、これらの対応をしてもらえない可能性があります。よって必ず払えなくなる前に、金融機関もしくは専門家に相談しましょう。

②ご自身で債権者と話し合いをする際は、信用情報がどうなるのかをしっかりと確認すること

もし、例えばアイフ○や○コムなど消費者金融と交渉した場合、元金は不要なので利息のみ払う、もしくは数か月支払いを猶予して、その猶予分を後日の支払いに上乗せするなどの提案があるかと思います。これらの条件は上記通達により、通常時より柔軟に対応していただけると思います。
また交渉する際には必ず信用情報がどうなるのかを確認しましょう。上記信用情報機関の対応により、信用情報に傷がつきにくいと思いますが、信用情報機関は「要請」をしているだけですので、実際どうなるかは、交渉しないとなんとも言えません。
また条件が良くない場合(特に消費者金融との交渉)は専門家に交渉を依頼したほうがいいかもしれません(専門家と消費者金融との交渉であれば、将来利息のカットが期待できます)

③「金融機関(特に消費者金融)との交渉がうまくいかないときや、今後収入の回復の見込みがなく、契約通りの返済ができない場合は、専門家に依頼すべき」

このような状況下なので、債務者本人の相談にも柔軟に対応してもらえますが、消費者金融などは、専門家が交渉したほうが好条件で返済できると思います(住宅ローンや奨学金などは債務者本人が交渉しても結果は変わらないと思います)。また借金を返済することが出来なくなり、破産や民事再生を検討している場合は必ず専門家に相談すべきかと思います(破産等は一般の方が手続するのは困難です)。
ただ専門家に依頼するデメリットはやはり信用情報に傷がつくことです。よって信用情報に傷をつけたくなく(今後マイホームを購入したい等)、収入が下がるのが一時的であるならば、専門家に依頼せず、債務者本人での解決を検討したほうがいいかもしれません。

借り入れの種類別の債務整理方法

最後にいくつか借り入れの種類別の債務整理方法を説明したいと思います。

・消費者金融(ショッピング及びキャッシング)
これらに関しては、信用情報に傷がついてもいいのであれば、専門家に相談して任意整理を依頼したほうがいいと思います。ただ、もちろん今回の件もあり柔軟には対応してもらえると思いますが、債務者本人からの申出では、専門家の交渉なら認めてもらえる将来利息のカットは難しいのではないかと思います。これらの借金は金利が高いので、できれば専門家に依頼して任意整理するのをお勧めします。

・住宅ローン
住宅ローンに関しては、支払いが遅れる前に借り入れ先の金融機関に相談するのが重要です。また上記カード会社と異なり専門家をいれて交渉しても、交渉結果にまず違いはないので、自分で交渉したほうがいいと思います。なお交渉しても今後の見通しが立たないようであれば、不動産の売却も検討することになります(いわゆる任意売却です。差押後の競売と比べ、高く売却できるなどのメリットがあります)。また住宅ローンのほかにカードローン等他の借金がある場合、民事再生手続きを採ると住宅ローンの支払いは従来で、マイホームを手放さず、他の借金の減免ができます。
また特に住宅ローンに関しては、遅滞しそうな場合必ず事前に金融機関に相談しましょう、遅滞してからでは、有効な対応が出来なくなる場合があります。

・奨学金(日本学生支援機構)
奨学金は、今回の件とは関係なく、支払いの猶予と減額の制度があります。今回の件でこれらの申請がしやすくなっているようです

(以下日本学生支援機構HP参照)
https://www.jasso.go.jp/sp/news/1327568_5021.html

・家賃
家賃は借金ではないのですが、念のため記載しておきます。家賃を一ヶ月分滞納した場合でも、よほどのことがない場合(大家と他の件でもトラブルがある等)、賃貸借契約は解除されません。また家賃を滞納した場合鍵の交換をするなどの警告されたとしても、それらは違法行為です(万が一された場合は、専門家に相談してください)賃貸借契約が終了するには当事者間の信頼関係が破壊されている必要があり(あくまで目安ですが、三か月分の滞納が該当します)、強制的に追い出すには、訴訟を経なければなりません。家賃を支払うことが出来ない場合、信頼関係を壊さないように、まずは支払いの猶予をお願いしてみたらよいと思います。

 

最後に

何度も言いますが、一番重要なことは絶対に滞納を放置しないことです。
もし現状どうすればいいかわからないのであれば、当事務所を含め専門家に是非ご相談ください。
必ずあなたの力になります。

司法書士 松尾孝紀

(注意:以上の文章は一般の方の債務整理を想定しております。自営業者などは別の対応が必要となることをご了承ください。)

 

債務整理を専門家(司法書士・弁護士)に頼むメリット

 

債務整理を自分でできないのか

債務整理の費用は決して安くありません。事案によっては数十万円かかることもざらです。
そこで当然自分でやってみてはどうかと思う方もいると思います。ただ自分でやるのはやはり難しいのではないかと思います。以下に債務整理を専門家に任せるメリットを書いていきます。

メリット1 取り立てが止まる

幣所に依頼される方皆様いいますが、債権者は取り立てが非常に厳しいです。滞納すると毎日催促の電話がかかってきます。そこで我々専門家が受任通知を債権者に送付すると連絡が来なくなります。
これは貸金業法という法律の中で司法書士、弁護士からの受任通知が届いた場合、債務者に対する取り立てを原則してはならないことが記載されているからです。
もし自分で債務整理をする場合、ひっきりなしにくる催促に対応しながら対応する必要があります。

メリット2 ほぼ和解交渉に応じてくれる

もし任意整理での和解を希望の場合、自分で交渉しても応じてくれない可能性があります。任意整理はあくまで債権者の任意であって、和解を強制できるわけではありません。
これに対し、専門家が介入した場合はよほどのことがない限り債権者は和解に応じてくれます。

メリット3 任意整理で有利な条件を提示できる

当然ですが専門家の場合、法律の知識があります。知識がない場合不利な和解契約を締結してしまう恐れがあります。例えば消滅時効が主張できる場合(借金がチャラになるということです)債権者はそのことを隠して和解を締結しようとしてきます。もし和解してしまうと本来は払わなくてもよい借金を返済することになります。消滅時効を主張できることに気が付いたとしても、和解締結後に消滅時効を主張するのは難しいです。

また債権者との交渉に慣れています。例えば過払い金が発生したとして、他の債権者に対して一括で支払うお金が出来たとします。この場合一括で返すことを条件に元金を一部免除してもらえることもあります。なかなか一般のかたではそこまで交渉するのは難しいと思います。

メリット4 破産に関しても手続きがスムーズに

上記の例は任意整理の場合ですが、破産の場合はどうでしょうか。実は破産は本人申立でもすることが出来ます。破産の申立関係の書類は作成するだけならば、ある程度の事務処理能力を持つ方であればさほど難しくありません。

ただ作成するのとその書類で円滑に破産手続きが進むかは別問題です。破産をするためには破産法の知識がなければ円滑には出来ません。例えば、破産をするにあたっては友人及び家族への借金も同様に免責しなければなりません。義理を欠きたくないとして金融機関のみを免責することは許されません。また弁済に関して、債権者は平等である以上特定の債権者への弁済は基本的に認められていません。但し、例えば税金の支払いに関しては法律上当然に認められています。家賃の支払いに関しても認められますが、滞納分は認められない場合もあります。この点に関しては裁判所と交渉をする必要があります。

また専門家が受任した場合は、破産管財人が付かないよう(破産管財人が選任されると20万円以上費用がさらに掛かります)に書類の作成をしますが、一般の方だとそのような対応が出来ず、破産管財人が選任されずに済むべきだった案件で破産管財人が選任される可能性があります。

司法書士 松尾孝紀

 

債務整理で裁判所から書類が届いた場合の対応②

はじめに

前回のブログにて、裁判所から書類が届いた場合の一般的なお話をしました。ところでもし、これらの書類が届いた場合に、専門家へすぐに相談できず一人で対応しなければならない場合、支払い督促と訴状それぞれの対応の仕方についてお話したいと思います。

 

支払い督促の場合

前回もお話しましたが、裁判所から届く書類の内容は2種類で、支払督促か訴状です。
支払督促と訴訟の見分け方ですが、書類の冒頭を見れば「支払督促」、「訴状」と書いてますので、冒頭を確認ください。
まず届いた書類が支払い督促だったとします。まず中身を確認しましょう。内容は少し複雑ですが、借りた会社と借りた額の書類が添付されているので理解できると思います。
支払督促の場合、訴訟に比べ①時間稼ぎがしやすい②返答(督促督促)が容易です。
まず①についてですが、その理由として支払督促は異議申し立てをすると(督促意義という)、訴訟に移行するからです。支払督促から訴訟に移行する際に手続き上、数か月かかるので時間稼ぎがしやすいのです。
②についてですが、督促異議には理由の記載が必要ありません。裁判所から督促異議申立書のひな形が送られてきます。その書式に分割払いを希望する等とありますが、それらの記載は不要です。むしろもし消滅時効を主張できる場合等後日の対応において、不利になる可能性があります。もし現に借金をしていたとしても、書面で認めたりせず、返答としては「専門家と協議したうえ対応を決めたい」、「詳細を確認したうえで対応を決めたい」等でよいと思います。裁判所の書式通りにこの段階で分割払いを認める必要はありません。
注意点ですが、督促異議は、支払督促を受領してからが2週間以内に届くようにしましょう。また裁判所を訪問する必要はありません。なぜなら支払督促は書面審査なので、裁判所に出頭する必要がないからです。

訴訟の場合

訴訟の場合の対応はどうすればいいでしょうか。
支払督促と違い訴訟の場合は本来当事者が裁判所に出廷するのが原則なのですが、実は実務上も訴えられた方(被告といいます)は初回についてはあまり出廷しません、なお訴えたほう(原告)は出廷します、当事者のどちらかが出廷しないと原則訴訟が進行しないからです。よって答弁書だけ返送することを考えましょう。
さて初回の答弁書にはどのようなことを記載すればいいのでしょうか。裁判所からの訴状には答弁書のひな形があるので、回答するのにはさほど困らないかもしれませんが、書式に従って書くことが、あなたにとって一番いい選択とは限りません。
なぜなら訴訟には色々とルールがあり、それを知ったうえで答弁書を書いた方が当然有利な結論になります。
まず訴訟のルールとして、何も主張しないことは相手の主張をそのまま認めることになります。よって何度もいっているように訴状を無視するのはやめたほうがいいのです。
訴訟を速やかに終わらせて、せめて分割払いにしたい場合は答弁書のひな形通り、相手の主張を認め、自分の主張に分割払を希望すると書くのが良いでしょう。相手側も分割払いに応じる可能性は十分あります。しかし、一般的に早期に終わらせるのは債務者にとって損なことが多いですし、消滅時効等他に主張できることもあるかもしれないので、専門家に一度はアドバイスを聞いた方が間違いなくいいです。
私がお勧めするのは、いわゆる「三行答弁」です。三行答弁で検索していただければよくわかると思いますが、何も答弁書を出さないとそのまま敗訴で終了してしまうので、答弁書は提出するけれども、何も答えず次回の裁判にて主張するという答弁書です。何も答えなくてもいいのかと思うかもしれませんが、実務上よくある手段ですので問題ありません。まずいわゆる「三行答弁」を提出し、時間稼ぎをして対応を決めましょう。

まとめ

繰り返しとなりますが、一番してはいけないのは対応を一切とらないことです。できれば時間稼ぎをし、その間に専門家に相談するのがお勧めです。

債務整理で裁判所から書類が来た場合の対応方法

はじめに

借金をして返済しないでいるとまず督促の電話、書類が届きます。よく聞かれる質問として債権者からいつまでに返済しない場合訴訟を検討しますとの書類が届きましたがどうすればいいでしょうかという質問です。

もちろん返済が遅れると信用情報に傷がついてしまい、今後お金を借りにくくなってしまいますが、このような書類が届いたとしても即財産が差し押さえられるわけではありません。この時点ならまだ債務整理も比較的容易にできます。指定された日付に弁済しなくとも債務整理は可能です。

一方裁判所から来た書類を無視するのはどうでしょうか。これは絶対にやめるべきです。裁判所から来た書類を無視すると最悪財産の差し押さえをされてしまいますし、好条件で和解ができなくなります。

なぜ裁判所を通した手続きを採るのか

ところで業者が訴訟をする目的とは何でしょうか。これは二点目的があります。

一点目が財産を差し押さえするためです。例えば税金を滞納した場合、税務署は裁判なしに口座を差押できますが、民間企業はもちろんそんなことはできません。通常は財産を差し押さえるために、裁判所に訴訟を提起して判決文等債務名義をとり、それに基づいて差し押さえをします。

もう一つの目的は訴訟を提起されると消滅時効の期限(借金がなくなるという意味です)が10年先まで伸びます。通常金融機関から借りた債権は最後の取引から5年で消滅時効にかかりますが、訴訟を提起することで時効期間を延長させるわけです。

裁判所からの書類を無視すると

さて裁判所からの書類を無視するとどのような不利益があるのでしょうか。よくあるのが、裁判所からの書類を無視した挙句、給与を差し押さえられてしまったケースです。借り入れする際は通常就業先を伝えてますので、無視すると最悪給料を差押されてしまいます。差押さえ額は大体ですが給与の手取りの四分の一ほどです(給料の額が多い場合はそれ以上差押される場合もあります)。

給与を差押されてしまうとここから交渉するのはかなり難しいです。債権者によっては差押解除に応じてくれるところもありますが、任意整理で和解したければ、せめて差押までにする必要はあります。

つぎに考えられることとして、本来消滅時効の期間が経過しているのにも関わらず、訴状を無視すると消滅時効が主張できなくなる可能性があります。消滅時効というのは特定の期間の経過(一般の金融機関だと五年)だけでは成立しません。時効は時効が成立したことを債権者に主張する必要があります。

なお裁判所から送られてくる書類には二種類あります。支払督促と訴状です。届いた書類が支払い督促なら裁判所の手続終了後に時効の消滅を主張することは可能ですが、訴状の場合、訴訟終了後は原則証明時効を主張することはできません。

まとめ

以上述べたように裁判所から書類が届いたら必ず対応していただければと思います。但し、裁判所から書類が届いてから債務整理するとやはり和解条件が厳しいです。特に訴状が届いてから債務整理に着手する場合、60回払かつ将来利息なしで和解することも出来ますが、条件として和解内容を遵守できなかった時にすぐに差し押さえができる「和解に代わる決定」での和解をせざるをえません。

結論ですが、やはり和解は早い時期に越したことはありません。借金を返済できなくなった場合は無視をせず我々専門家に速やかに相談していただければと思います。

司法書士 松尾孝紀