債務整理一般

借入額別に見る借金相談の解決法

1.はじめに 

債務整理の方法は、大きく分けて下記3つの方法があります。

債務整理の方法 手続内容
任意整理 裁判所を介さずに、貸金業者やクレジットカード会社と毎月の支払額や将来利息のカット等の返済方法について交渉をして、返済を軽くする手続
個人再生 裁判所の許可を得て、借金の額を約5分の1にして、3年程度(36回払い)で返済をしていく法的手続
自己破産 裁判所の許可を得て、価値のある財産は手放す代わりに、税金等を除く借金をゼロにする法的手続

今回は、借金の額別にどのような手続を取るのが良いのか検討していきたいと思います。

 

2.200万円以下の借金について 

・200万円以下の借金相談の場合には、「任意整理」を選択することが多いです。

200万円の借金を任意整理した場合には、毎月の返済額は約4万円になります。

札幌で一人暮らしの方の場合、年収250万円前後、手取収入が毎月18万円前後あれば、任意整理はギリギリ可能であると思います。下記に家計の概要を記載してみました。数字上は1万円余力があるように見えますが、思わぬ出費もあるでしょうから、このあたりが任意整理可能なギリギリのラインと考えます。

収入 支出
費目 金額(円) 費目 金額(円)
給料 180,000 家賃 50,000
食費 30,000
公共料金

(電気・ガス等)

20,000
携帯電話代 15,000
その他雑費 15,000
借金返済 40,000
小計 170,000
翌月へ繰越 10,000
収入合計 180,000 支出合計 180,000

・個人再生手続きは、個人再生費用を考えると選択することは極めて少ないです。

個人再生の手続きは、裁判所の許可を得て、借金を圧縮する手続きのため、資料収集が大変です。また、個人再生予納金と専門家への手数料を併せると費用が約60万円前後かかります。

個人再生を行った場合、200万円の借金は100万円までしか圧縮できません。そのため、個人再生費用とその手続きの大変さを考えると、選択肢としてはあまり現実的ではありません。

・収入が少ない場合には、自己破産も選択肢の一つです。

自己破産を行うには、借金の支払不能が条件とされています。収入が少なく、借金返済が難しい場合には、自己破産の検討も必要になってきます。なお、生活保護を受給中で借金のある方は、借金を生活保護費で返済することは禁止されているため、破産手続きを検討することになります。

 

3.200万円~500万円の借金について

・500万円以内の借金相談は、「任意整理」希望の方が多いです。

例えば400万円の借金を任意整理して、各会社との交渉が上手く言った場合、月額7万円前後の支払額になります。任意整理を選択した場合、毎月7万円を約5年間継続することになるため、安定した高収入の方や、夫婦共働きの方は任意整理を選択することがあります。任意整理を希望される理由としては、車のローンや保証人がついている借金(例:奨学金)を債務整理の対象から外すことができる事、またご家族に借金のことを秘密にしたいという理由が多いです。

・個人再生も選択肢の一つ。借金の額を100万円に圧縮できます。

任意整理での支払いは厳しく、破産は資格制限があり(例:保険の募集)、一定期間仕事が出来なくなってしまう、また破産自体に抵抗があるという方は、個人再生を選択されます。個人再生を行った場合、500万円までの借金は100万円に圧縮できることが多く、約3年(36回払い)で支払いをしていくため、月額約3万円の支払いです。3万円の支払いなら何とかやっていけそうだという方は多いです。

・収入が安定していない、収入が少ないという方は自己破産検討の必要有り

家計が日々の生活でやっとである、借金返済に充てるお金がないという方は、自己破産の検討が必要です。例えば、札幌で一人暮らし、手取り15万円、借金が400万円といった場合には、任意整理だけでなく、個人再生であっても返済は難しいでしょうから、破産を選択することになると思います。

 

4.500万円を超える借金について

・借金が500万円を超えると「任意整理」での返済は難しくなってきます。

500万円前後の借金を債務整理すると、月額の支払額は約10万円前後になってきます。500万円を超える借金をされている方は、高収入の方がほとんどです。そうすると、住宅ローンや車のローンの支払いもある方が多く、任意整理で10万円前後の借金を返済して、その他にローン返済もしていくというのは、かなり難しい状況になってきます。

・個人再生をすると、借金の額を約5分の1に圧縮できるため、返済可能な額になってきます。

例えば、1000万円の借金があった場合、個人再生が上手くいくと、借金を200万円に圧縮して、3年払い(36回払い)になるため、月額約56,000円の支払いです。もし、1000万円を任意整理すると月額20万円前後の支払いになると思いますが、個人再生だと約56,000円のため、現実的な返済額になってきます。

・自己破産をした場合には、管財事件になる可能性が高いです。

500万円を超える借金になると、借金の理由が生活費以外のことがほとんどだと思います。ギャンブルや投資、浪費といったものも含まれてくると思います。そうなってくると、裁判所はしっかりと借金の理由を調査しようとするため、裁判所は破産管財人という財産調査を行う弁護士を選任する可能性が高いです。破産管財人が選ばれると、裁判所に20万円~50万円程度の予納金を収める必要が出てきますので、破産をするにしても費用が高額になってきます。

 

5.まとめ

借金の額に応じた、債務整理の方法についてご説明をしてきましたが、ご相談者の状況は一人一人異なってきます。例えば、一人暮らしの方と、奥様・お子様一人の三人家族の方では、手取収入が同じ20万円の方でも毎月かかる生活費が大きく変わってきます。また、共働きの家庭か、お子様が何歳かによっても状況は変わってきます。そのため、借金の額や年収だけではなく、現在の家計の収支状況を正確に把握していく必要があります。今後のライフプランも含めて考えていく必要があるため、自分一人で判断するのは難しいと思います。

借金にお悩みの方は、ご自身にどの債務整理方法が一番合っているのか、まずは一度、弁護士・司法書士といった専門家に相談するのが良いと思います。

 

司法書士 平石 悠亮

債務整理を委任する際は、報酬が安くてもいいのでしょうか

はじめに

当事務所札幌借金相談センターは、債務整理(任意整理)において札幌トップクラスの安さを売りにしております。よく依頼者にこの値段で債務整理をして問題ないのか質問されますが、全く問題なく適切な料金設定だと考えております。

債務整理の依頼する際に一番重要なこと

債務整理を依頼する際一番重要なのは、価格ではなく、専門家が対応するかどうかです。債務整理を依頼する際には、専門家が対応してくるところを選び、その上で報酬が安いところを選ぶべきだと思います。

司法書士、弁護士事務所に依頼しているのに専門家が対応しないことがあるのかと思うかもしれませんが、実はそのような事務所はよくあります。ありがちなのは、広告量を多額にかけて大量に事件を受任する事務所です。広告費がかかるので、報酬は高くなりがちであり、大量に事件を処理するため事件処理は専門家ではなく事務員に任せることになります。もちろん事務員に任せている以上適切な債務整理は期待できません。例えば事案に応じて、任意整理か破産等法的整理にするかを選択する必要がありますが、破産に対応する法的知識がない場合、意味のない任意整理をしてしまうことなどが挙げられます。個人的な意見ですが、高額な報酬を請求する事務所は意外とこのような対応の事務所が多い傾向にあります。

債務整理の事務所の選び方

では、どのようにして債務整理の事務所を選ぶべきかですが、報酬は安い事務所で問題がないと思います。その上で一度専門家と面談し(債務整理の場合はルール上面談が必須です。電話相談だけで受任する事務所はコンプライアンスに問題がある事務所です)、しっかり話を聞いたうえで解決策を提示してくれるか確認しましょう。また報酬は明朗会計な事務所を選びましょう(報酬体系があいまいな事務所もありますが、そのような事務所に委任すべきではないと思います)。

まとめ 報酬が安くとも問題ありません

残念ながら、債務整理の業界においては、専門家がいる事務所に依頼したからといって適切な債務整理をしてくれるわけではなく、報酬が高いからといって質が上がるわけではありません。それなりの高額の報酬をお支払いするのであれば、しっかり面談をして、その事務所の良し悪しを見極めましょう。なお当事務所は、面談は必ず専門家が対応し、報酬は明朗会計です。もしお近くにお住まいでしたら、是非当事務所にご依頼ください。

司法書士松尾孝紀

任意整理と債務整理の違いについて

はじめに

任意整理と債務整理は言葉こそ似ていますが、具体的にどう異なるのでしょうか。一言でいうと任意整理は債務整理の一手段です。債務整理の方法として、任意整理、破産、民事再生がありますが、任意整理はその中の一つです。

債務整理とは

債務整理とは、契約通りに債務を返済できなくなった場合にする借金の整理のことです。その方法として、上記でふれたように任意整理、破産、民事再生があります。

任意整理の場合はあくまで債権者側の承諾をもとに内容を変更するので利息及び遅延損害金の減額や支払回数は交渉に応じてくれますが、元金の減額にはまず応じません。あくまで元金を弁済することになります。

破産や民事再生は、元金も弁済できない場合に裁判所の関与のもとで、元金を免責することができます。

任意整理とは

債務整理とは、債務(借金)が当初の契約通り返済できないため、債務の内容を変更(整理)することです。

任意整理は、債権者と直接交渉して、その合意によって(よって「任意」です)債務整理をするわけです。上記でも触れているように、将来利息と遅延損害金をカットの上、元金は返済していくこととなり、支払い回数は5年60回での支払いで交渉します。

破産、民事再生とは

一方破産、民事再生は、債務(借金)が当初の契約通り返済債権者はその手続きに関与することはできますが、内容の変更(主に債務の免責)につき、合意によって変更(よって任意ではない)するのではなく、裁判所の審判によって変更されます。

破産と民事再生の違いですが、破産は債務者の総財産(家具等はのぞく)を処分し、すべての債務を免責する手続きです。一方、民事再生は、すべての財産の処分を前提せず、また免責は総債務の5分の1まで減らすことができます。破産と民事再生の違いはいくつもありますが、実務的には、民事再生はマイホームを所持したままできるのが、一番大きな違いです。

司法書士松尾孝紀

 

債務整理とマイホーム

はじめに

今回は多重債務により債務整理を希望する場合、マイホームがある時(住宅ローンがある場合)の対応方法を説明したいと思います。債務整理をするにあたり、マイホームを所有している場合は、ほとんどの方がマイホームを手放すことなく借金問題の解決することを希望です。そこでまずはマイホームを手放さずに借金問題の解決する方法を検討しましょう。

①任意整理による解決

まずマイホームを所有し続ける手段として、まず挙げられるのがこの任意整理です。任意整理は、債権者と裁判外での和解によって、将来利息や支払い回数などの条件を変更し、借金問題を解決する手段です。
消費者金融及びカード会社の交渉に関しては、専門家が交渉すると将来利息をカットすることが出来ますので、支払いに余裕ができると思います。また住宅ローンも交渉可能です。こちらは専門家に任せずご自身で交渉してみてもいいかもしれません(住宅ローンに関しては、交渉がまとまるかは別として、一般の方でもまず交渉に応じてもらえます)。

 

② 民事再生による解決

カードローンや消費者金融から多額の借り入れをしつつ、住宅ローンの支払いを続けている場合、上記の任意整理では解決しない場合が多々あります。任意整理によって将来利息はカットできますが、元金の支払いは原則必要です。そこで任意整理による解決が難しい場合、裁判所の関与の下、借金の総額(住宅ローンを除く)をおおよそ5分の1(必ずしも5分の1になるわけではないことは注意が必要です)することが出来る民事再生が解決手段として候補に挙がります。

裁判所の関与の下で、債務を免責するのは破産も同様ですが、破産はすべての債務が免責になる一方で、原則財産は全て処分しなければなりません。しかし民事再生を利用すれば債務の額を5分の1程度にしつつ、住宅ローンは従前の通り支払うことでマイホームの維持が可能となります(但し住宅ローンは免責されません)。

 

③ 任意売却による解決

以上マイホームを手放さずに債務整理する方法を説明しました。では住宅ローンを支払えなくなり、住宅を手放さざるを得なくなった場合どうすればいいのでしょうか。

これは任意売却をすべきだと思います。住宅ローンが払えなくなった場合、不動産の処分方法として任意売却か競売のどちらかになりますが、任意売却の方が売却価格はまず高額です。住宅ローンの残高より、売却価格の方が高額であれば、その他の返済に回すこともできます。また住宅ローンは交渉次第では引っ越し費用の捻出も可能です。

最後に

最後にマイホームを手放さない方法として一番重要なことですが(任意整理、民事再生問わず)、借金を滞納する前に早めに専門家に相談することです。

借金を滞納後からの介入は、解決が難しくなります。また住宅ローンが払えないからといって消費者金融から借り入れをするのもお勧めしません。消費者金融の金利はかなり高いので、一時的にしのいだとしても、その後消費者金融と住宅ローンの返済によって支払不能になる可能性が高いです。借金を滞納しそうになった場合や滞納した場合は速やかに専門家に相談しましょう。

司法書士松尾孝紀

債務整理は家族に内緒でできるのか

債務整理は家族に内緒でできるのか

よく依頼者から債務整理は家族に内緒でできますかとお願いされることがあります。結論からお話すると任意整理なら可能ですが、破産等は難しいです。
以下その理由について説明していきます。

なお任意整理と破産については下記ブログを参照ください。

https://sapporo-saimu.com/blog/debt-workout/

任意整理の場合

任意整理とは、裁判手続きを経ずに、債権者との交渉により、今後の返済スケジュールを決定する手続きですが、専門家が任意整理をする場合、法律上債権者から債務者へ直接連絡を取ることが出来なくなります。つまり債権者の自宅訪問、電話や郵送することがなくなりますので、家族にバレにくくなります。もちろん専門家と依頼者との書類のやり取りも必要な場合がありますが、少なくとも当事務所では、家族に内緒で債務整理をする場合、書類を渡す場合には、事務所に直接お越しいただくか、局留めにて郵送をしております。

また任意整理和解後においても、当事務所が委任関係を継続すれば、債務者に連絡がくることはまずありません。
但し、上記の対応は、金融業の許可を取って営業している適法な会社であり、ヤミ金などは
依頼者への連絡が止まるとは限らないことは注意が必要です。
また勤務先に任意整理のことをバレないかと聞かれますが、これについても適法の金融機関の場合は、専門家が受任後は勤務先に連絡することが出来なくなります。

破産等の場合

任意整理と比較して破産の場合は、内緒にするのがかなり難しいと思います。理由としていくつかありますが、まず破産申立の書類の添付書類には同居人の通帳の写しや、給与明細、確定申告書等本人でなければ取得できない書類が多数あるからです。

また破産管財人が選任された場合は、債務者本人宛の郵送物が、本人ではなく破産管財人宛に届くことになりますし、管財人による同居人の財産調査の可能性もあります。
上記の理由を考えると破産を家族に内緒で申告するのは難しいです。

まとめ

当事務所では受任時に家族に内緒で債務整理したいかを必ず確認しております。あと細かいところではありますが、書類をお渡しする際の封筒を事務所名が記載されているものではなく無地のものをお渡ししております。

また当然のことですが、専門家には守秘義務があります。たとえ家族のこととはいえ、債務者の情報を、本人の承諾なしに家族に提供することはありません。当事務所ではできる限り依頼書の希望にこたえますので、是非ご相談ください。

司法書士松尾孝紀