2019年 3月 の投稿一覧

債務整理で裁判所から書類が届いた場合の対応②

はじめに

前回のブログにて、裁判所から書類が届いた場合の一般的なお話をしました。ところでもし、これらの書類が届いた場合に、専門家へすぐに相談できず一人で対応しなければならない場合、支払い督促と訴状それぞれの対応の仕方についてお話したいと思います。

 

支払い督促の場合

前回もお話しましたが、裁判所から届く書類の内容は2種類で、支払督促か訴状です。
支払督促と訴訟の見分け方ですが、書類の冒頭を見れば「支払督促」、「訴状」と書いてますので、冒頭を確認ください。
まず届いた書類が支払い督促だったとします。まず中身を確認しましょう。内容は少し複雑ですが、借りた会社と借りた額の書類が添付されているので理解できると思います。
支払督促の場合、訴訟に比べ①時間稼ぎがしやすい②返答(督促督促)が容易です。
まず①についてですが、その理由として支払督促は異議申し立てをすると(督促意義という)、訴訟に移行するからです。支払督促から訴訟に移行する際に手続き上、数か月かかるので時間稼ぎがしやすいのです。
②についてですが、督促異議には理由の記載が必要ありません。裁判所から督促異議申立書のひな形が送られてきます。その書式に分割払いを希望する等とありますが、それらの記載は不要です。むしろもし消滅時効を主張できる場合等後日の対応において、不利になる可能性があります。もし現に借金をしていたとしても、書面で認めたりせず、返答としては「専門家と協議したうえ対応を決めたい」、「詳細を確認したうえで対応を決めたい」等でよいと思います。裁判所の書式通りにこの段階で分割払いを認める必要はありません。
注意点ですが、督促異議は、支払督促を受領してからが2週間以内に届くようにしましょう。また裁判所を訪問する必要はありません。なぜなら支払督促は書面審査なので、裁判所に出頭する必要がないからです。

訴訟の場合

訴訟の場合の対応はどうすればいいでしょうか。
支払督促と違い訴訟の場合は本来当事者が裁判所に出廷するのが原則なのですが、実は実務上も訴えられた方(被告といいます)は初回についてはあまり出廷しません、なお訴えたほう(原告)は出廷します、当事者のどちらかが出廷しないと原則訴訟が進行しないからです。よって答弁書だけ返送することを考えましょう。
さて初回の答弁書にはどのようなことを記載すればいいのでしょうか。裁判所からの訴状には答弁書のひな形があるので、回答するのにはさほど困らないかもしれませんが、書式に従って書くことが、あなたにとって一番いい選択とは限りません。
なぜなら訴訟には色々とルールがあり、それを知ったうえで答弁書を書いた方が当然有利な結論になります。
まず訴訟のルールとして、何も主張しないことは相手の主張をそのまま認めることになります。よって何度もいっているように訴状を無視するのはやめたほうがいいのです。
訴訟を速やかに終わらせて、せめて分割払いにしたい場合は答弁書のひな形通り、相手の主張を認め、自分の主張に分割払を希望すると書くのが良いでしょう。相手側も分割払いに応じる可能性は十分あります。しかし、一般的に早期に終わらせるのは債務者にとって損なことが多いですし、消滅時効等他に主張できることもあるかもしれないので、専門家に一度はアドバイスを聞いた方が間違いなくいいです。
私がお勧めするのは、いわゆる「三行答弁」です。三行答弁で検索していただければよくわかると思いますが、何も答弁書を出さないとそのまま敗訴で終了してしまうので、答弁書は提出するけれども、何も答えず次回の裁判にて主張するという答弁書です。何も答えなくてもいいのかと思うかもしれませんが、実務上よくある手段ですので問題ありません。まずいわゆる「三行答弁」を提出し、時間稼ぎをして対応を決めましょう。

まとめ

繰り返しとなりますが、一番してはいけないのは対応を一切とらないことです。できれば時間稼ぎをし、その間に専門家に相談するのがお勧めです。

債務整理で裁判所から書類が来た場合の対応方法

はじめに

借金をして返済しないでいるとまず督促の電話、書類が届きます。よく聞かれる質問として債権者からいつまでに返済しない場合訴訟を検討しますとの書類が届きましたがどうすればいいでしょうかという質問です。

もちろん返済が遅れると信用情報に傷がついてしまい、今後お金を借りにくくなってしまいますが、このような書類が届いたとしても即財産が差し押さえられるわけではありません。この時点ならまだ債務整理も比較的容易にできます。指定された日付に弁済しなくとも債務整理は可能です。

一方裁判所から来た書類を無視するのはどうでしょうか。これは絶対にやめるべきです。裁判所から来た書類を無視すると最悪財産の差し押さえをされてしまいますし、好条件で和解ができなくなります。

なぜ裁判所を通した手続きを採るのか

ところで業者が訴訟をする目的とは何でしょうか。これは二点目的があります。

一点目が財産を差し押さえするためです。例えば税金を滞納した場合、税務署は裁判なしに口座を差押できますが、民間企業はもちろんそんなことはできません。通常は財産を差し押さえるために、裁判所に訴訟を提起して判決文等債務名義をとり、それに基づいて差し押さえをします。

もう一つの目的は訴訟を提起されると消滅時効の期限(借金がなくなるという意味です)が10年先まで伸びます。通常金融機関から借りた債権は最後の取引から5年で消滅時効にかかりますが、訴訟を提起することで時効期間を延長させるわけです。

裁判所からの書類を無視すると

さて裁判所からの書類を無視するとどのような不利益があるのでしょうか。よくあるのが、裁判所からの書類を無視した挙句、給与を差し押さえられてしまったケースです。借り入れする際は通常就業先を伝えてますので、無視すると最悪給料を差押されてしまいます。差押さえ額は大体ですが給与の手取りの四分の一ほどです(給料の額が多い場合はそれ以上差押される場合もあります)。

給与を差押されてしまうとここから交渉するのはかなり難しいです。債権者によっては差押解除に応じてくれるところもありますが、任意整理で和解したければ、せめて差押までにする必要はあります。

つぎに考えられることとして、本来消滅時効の期間が経過しているのにも関わらず、訴状を無視すると消滅時効が主張できなくなる可能性があります。消滅時効というのは特定の期間の経過(一般の金融機関だと五年)だけでは成立しません。時効は時効が成立したことを債権者に主張する必要があります。

なお裁判所から送られてくる書類には二種類あります。支払督促と訴状です。届いた書類が支払い督促なら裁判所の手続終了後に時効の消滅を主張することは可能ですが、訴状の場合、訴訟終了後は原則証明時効を主張することはできません。

まとめ

以上述べたように裁判所から書類が届いたら必ず対応していただければと思います。但し、裁判所から書類が届いてから債務整理するとやはり和解条件が厳しいです。特に訴状が届いてから債務整理に着手する場合、60回払かつ将来利息なしで和解することも出来ますが、条件として和解内容を遵守できなかった時にすぐに差し押さえができる「和解に代わる決定」での和解をせざるをえません。

結論ですが、やはり和解は早い時期に越したことはありません。借金を返済できなくなった場合は無視をせず我々専門家に速やかに相談していただければと思います。

司法書士 松尾孝紀

債務整理とマイカー

はじめに

債務整理をしたらマイカーはどうなるのかというのは債務整理するうえでよくある質問です。一概にどうなるということではなく、あくまで債務整理の内容によって車がどうなるのかは決まります。

 

破産の場合

まずは債務整理が破産に当たるのかどうかです。破産の場合は原則車に乗れなくなってしまいます。しかし継続して所有できる場合もあります。この場合車の財産価値やカーローンの有無や車が担保になっているかがポイントとなります(車の名義が債権者になっている等)

例えば車に財産価値がない場合(一般的に20万以下とされる)でカーローンがない場合はそのまま所有できる可能性が十分あります。逆にこの場合でもカーローンの残債がまだあり、さらに車の名義が債権者となっている場合は原則引き揚げられてしまいます。ただこのような状況においてもまだ使い続ける方法があります。それはカーローンの債権者と掛け合って第三者(債務者の親類など)がその車を購入してしまうことです。そしてその第三者が債務者に貸すなどをすればそのまま使用可能です。また生活する上でどうしても手放せないのであれば、自由財産の拡張の申立てにより、処分せずに使用を継続できる可能性もあります。このように破産の場合でもマイカーの使用の可能性は状況によってはあり得ます。

任意整理の場合

次に任意整理の場合はどうでしょうか。カーローンを借りていない場合、車は引き上げの対象となりません。カーローンがある場合ですが、任意整理はそもそもカーローンを任意整理の対象から外して対応することが可能です。カーローンを任意整理から外し、そのまま支払いを継続すれば、車の使用は何も問題はありません。

カーローンがある場合でも、車が担保に入っていなければ、カーローンを含めた任意整理をしても問題ありません。カーローンといっても必ずしも車を担保に入れるわけではありません。例えば〇リコや〇プラスなどは車を担保に入れることが多いですが、銀行系のカーローンですと担保に入れていないかケースが多いです。この場合担保に入っているかどうかは車検証などを確認して判断することになります。

車の引き上げ

もし債務整理により車を引きあげられる場合はどうなるのでしょうか。まず債務整理の受任通知をカーローンの債権者に送ることにより、債権者から引きあげの連絡が来ます。もちろん債権者も強引に引き上げをすることはできないので、原則債務者の協力を得て車を引き上げすることになります。

債権者としては訴訟をするのは手間であり、何とかして債務者と連絡を取ろうとします。当事務所でも債務者が協力しようとせずに引き上げまで数か月以上かかった案件もあります。但しこの場合債務整理手続きは進みません。なぜならこの引き上げ後に車を換金して、カーローンの残債からその換金した額を引いた額が債務整理する金額ですのでこの金額が確定するまでは債務整理が進みません。債務整理を速やかにしたい場合は債権者に協力したほうがよいと思います。

司法書士 松尾孝紀

任意整理の和解内容

はじめに

任意整理とは、債権者(カード会社等)と話し合いによって返済条件につき和解する手続きです。大体の和解条件として・元金を(今後の利息はカット)・月1回を計60回(五年間)で返済していく条件で交渉をします。

以前は司法書士・弁護士が介入するとかなりの確率にて上記内容で和解できたのですが、現在は60回ではなく36回払いにしてほしい、和解日までの利息をつけて欲しい(以前は弁護士、司法書士の介入の際の利息にて和解)など条件が変わってきてます。
さて任意整理の和解条件はどのような基準で変わるのでしょうか。主に①債権者(カード会社)②これまでの取引の内容③債務者の家計状況によって変わります。

当事務所では、面談する際に債権者と取引内容と家計内容の確認をします。この三つの点を確認することで大体の和解内容の推測をします。但し、各社和解内容を随時変えてきており、面談時の推測と和解時の債権者の主張が異なることはよくあります。

①債権者に関して

まず①債権者(カード会社)に関してですが、和解条件は当然のことかもしれませんが債権者たるカード会社の方針によって大きく異なります。

これまでの当事務所の実績からして、いわゆる地場の資本で経営されている街金、大手銀行などと資本関係にある消費者金融、ショッピングローンの立替払いを行う信販会社の順番に和解条件が緩く傾向にあります。例えば街金は上記の基準での60回払いを認めず24回払、36回払と当然に主張します。また和解締結後の将来利息の支払いを主張してくることも数多くあります。

これらに比べ消費者金融はそこまで条件が厳しくはありません。但し消費者金融は各社方針がかなり異なります。例えば上記の条件は問題ないのですが、司法書士、弁護士の介入後半年もすれば訴訟を提起する債権者もいますし、支払回数を60回認めてくれない会社もあります。一方和解後の利息に関しては請求してこない会社がほとんどです。

そして信販会社は上記の基準を認めてくれるところがほとんどです。和解条件に関してよほどのことがない限りはもめることがありません。

②取引に関して

次に②これまでの取引の内容に関してです。取引の内容とはカード会社と何年間取引したかとか、債務整理で介入するまでの最終の取引の履歴が和解条件に大きく影響してきます。
例えば和解する際に2、3か月しか取引していない方も依頼者の中にいます。お金が回らなくなりどうしようもなく借り入れしてしまったのはわかるのですが、このような取引では返済回数を多くしても返済してもらえないと債権者に判断されてしまいます。また時々借り入れした直後に債務整理の相談をされる方がおりますが、和解の成立すら困難となってしまいます。

 

③家計に関して

③最後に債務者の家計状況によっても和解条件は異なります。債権者各社には大体の和解条件が決められております。この条件内で和解する分には、交渉もスムーズですが、この基準(例えば支払い回数を増やしたい)よりもよい条件で交渉する場合には、債権者から家計状況を求められる場合があります。また逆に債権者が債務者の家計を把握している場合があります。例えばボーナスが年に2回確実に出ると把握されている場合はボーナス時に返済額を増やしてほしいといった主張もされます。

最後に

最後に上記の和解条件ですが、平成31年3月時点での内容となっております。実は年々和解条件が厳しくなっているのが気になります。もしかしたら今までは司法書士や弁護士が過払い金請求で請求する側でしたので、こちら側が優位に立っていたのが、過払い金がほぼ終息したことにより債権者側が強気になっているのかもしれません。

 

司法書士 松尾孝紀