債務整理のやり方(任意整理、破産、個人再生)
・はじめに
債務整理は、払えなくなった借金を整理することです。借金に困っている方の大半は、月々の返済が難しくなっている状況です。そこで我々専門家は、債務整理の依頼を受けた段階で債権者に対し受任通知を発送します。受任通知を発送することで、債権者への支払い及び催告を止めることが出来ます。いったん支払いを停止することで、一度生活を立て直していただきます。
その後借金の整理をするわけですが、払えなくなった借金を整理する手段として、任意整理や破産、個人再生などいろいろありますが、それぞれどういったものなのでしょうか。
・法定整理(破産、民事再生)とは
まず債務整理の手段として任意整理と法定整理(破産、個人再生手続)と分けられます。それぞれの区別は裁判所が関与するかと元金を返済するかチャラ(免責)にするかです。
裁判所が関与するということは、手続きをどの債権者に対しても原則平等に行われます。例えば破産の場合、業者から借りたお金と親から借りたお金を区別せずに免責にしてしまいます。また法定整理の場合、手続きに時間や手間がかかり、費用がかさむ傾向にあります。これは借金を免責にする以上債務者の調査に慎重な手続きを要するからです。事情によっては詳細な調査のため裁判所が破産管財人を選任することもあります。
破産とは別に法定整理の一種として個人再生手続もあります。破産の場合は債務がすべて免責となりますが、個人再生の場合は一部のみ免責です。但し個人再生の場合は住宅資金特別条項というものを使うことが出来ます。もしマイホームを所有している場合、破産の際にはマイホームを処分しなければなりません。それに対し個人再生の場合は借金を一部免責にして、マイホームを保有することが出来ます(但し、色々と条件がありますので、興味がある方は専門家にご相談ください)
法定整理の手順は、複雑ですので、詳細は後日に説明しようと思いますが、破産、個人再生手続きを問わず、まず裁判所に債務の状況(債権者の名前や総額、借金に至った事情)、家計簿、住民票(世帯全員)、給与明細、源泉徴収票など申立時に詳細な資料を提出する必要があります。手続き終了までのスケジュールは事案によって異なりますが、任意整理整理より時間がかかります。
・任意整理について
上記に比べて任意整理は裁判所の関与がありません。あくまでそれぞれの債権者と交渉する手続きです。交渉する相手を選択することもできます。例えばよくあるのが車をローンで借りている場合です。債務整理をすると車を引上げされてしまうので、カーローンの債権者を外して任意整理をする場合などがあります。
任意整理は時間や手間がかからず、迅速に行われる傾向があります。但し、利息はカットできるのですが、元々かりたお金に関しては元金を全額返済することになります。任意整理では、裁判所の関与なしに、業者と直接交渉します。大体の交渉の基準として①利息カット(元金は支払い)②五年間60回払いでの和解となります。
手順としては、業者にこれまでの支払い履歴を取り寄せ、こちら側で利息計算をし、正確な残金を算出したあとに債権者と交渉をします。たまにですが、借金があると思いきや、計算をしなおすと過払い金(業者が利息を取りすぎたこと)が発生していることもあります。なお任意整理は、法定整理と比べ、債権者側から債務の総額や手取り給与を聞かれることはありますが、書類を提出するといったことはあまりありません。
・まとめ
最後に債務整理において上記任意整理、個人再生、破産のうちどのように方針を決定していくかを説明していきます。まず債務の合計額を5年間60回払いで返せるかどうかが任意整理と破産、個人再生とを分けるポイントとなります。もし返済不能であれば、法定整理を検討しますが、マイホームを所有しているなど特殊な事情があれば個人再生を選択し、そうでなければ破産を検討します。
一番重要なことですが、借金に困ったらまず専門家に相談することです。債務整理の方法は複数あるのですが、借金を放置または不適切な行動をすることにより、状況が悪化してしまうことが多々あります。例えばマイホームを残したい場合の個人再生の住宅資金特別条項の活用には条件がありますが、専門家に相談しなかったため使えなくなってしまうことがありえます。借金の支払いがきつくなったと思ったら、そのままにせず必ず専門家に相談しましょう。
司法書士松尾孝紀