新型コロナウィルス感染症の影響を受けた方の債務整理について
現在当事務所では、新型コロナウィルス感染症の影響による債務整理を積極的に受任しております。もしお困りでしたら、是非お気軽にご相談ください。
ただ専門家に依頼しようかを迷っている方もおられると思います。通常の場合、なるべく専門家に依頼した方がいいと思いますが、今回の状況は通常の債務整理と異なる点があります。特に信用情報(いわゆるブラックリストに載ること)を気にされる方は、ご自身で交渉したほうがいいかもしれない場合があります(理由は後述します。自身の状況がよくわからないなどの場合は、依頼するかは別として、一度専門家に相談したほうがいいかもしれません)。
以下新型コロナウィルスにより債務が返済できなくなった場合の対応について考えてみたいと思います。返済に困ったときすべきこととして以下の点が挙げられます
① 返済が出来なくなりそうになった時点で、早めに金融機関もしくは専門家に相談すること。払えないからといって放置は絶対しない。
② ご自身で債権者と話し合いをする際には、信用情報がどうなるのかをしっかりと確認すること
③ 金融機関(特に消費者金融)との交渉がうまくいかないときや、今後収入の回復の見込みがなく、契約通りの返済ができそうにない場合は、自分で解決しようとせず、専門家に依頼すべき
では一つずつ解説していきます。
① 返済が出来なくなりそうになった時点で、早めに金融機関もしくは専門家に相談すること。払えないからといって放置は絶対しない。
現時点(2020年5月11日)において、借金が返せない場合の交渉を通常時に比べると金融機関も柔軟に認めています。例えば先日金融庁から以下の通達がなされました。
金融庁ホームページより
https://www.fsa.go.jp/news/r1/ginkou/20200407.pdf
上記の内容は経営者向けの貸し出しも含まれてますが、個人向けの貸し出しも含まれております。重要な点は次の二点です(上記「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を踏まえた資金繰り支援について(要請)から抜粋)。
・住宅ローンや個人向けローンについて、これまでの要請を踏まえ、さらに個人顧客 のニーズを十分に踏まえた条件変更等について、迅速かつ柔軟な対応すること。ま た、個人向けローン等の保証業務を行っている場合においても、こうした趣旨等を 踏まえた対応に努めること。
・新型コロナウイルス感染症により影響を受けた顧客から支払猶予等の申出を受け、 一定期間猶予した場合には、信用情報機関に延滞情報として登録しないこと。
これらはあくまで要請なので、必ずしも柔軟な対応をしてもらえるわけではないのですが、金融機関はたいていの場合、ヤミ金など違法な業者を除いて、まずこの通達を考慮します(なお筆者は、この通達後に任意和解後の支払い猶予の交渉をしました。大手消費者金融だけでなく、いわゆる街金も柔軟に対応してもらえました)
上記通達をもとに各金融機関も柔軟に対応しております。例として住宅金融支援機構(住宅ローンの金融機関)があります。
住宅金融支援機構ホームページより
https://www.jhf.go.jp/files/400352693.pdf
ちなみに民間の住宅ローンはこちらの記事が参考になります
東京新聞ホームページより
https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020051001001210.html
次に信用情報については、信用情報機関が以下のように声明をだしています。
通常の滞納に比べ、柔軟に対応しております。
CICホームページより
https://www.cic.co.jp/important/2020/04/post-6.html
JICCホームページより
https://www.jicc.co.jp/attention/information/?info=11
なお信用情報機関に関しては当事務所ブログの次の記事を参照してください
但し、金融機関に連絡せず、遅滞を放置していると、これらの対応をしてもらえない可能性があります。よって必ず払えなくなる前に、金融機関もしくは専門家に相談しましょう。
②ご自身で債権者と話し合いをする際は、信用情報がどうなるのかをしっかりと確認すること
もし、例えばアイフ○や○コムなど消費者金融と交渉した場合、元金は不要なので利息のみ払う、もしくは数か月支払いを猶予して、その猶予分を後日の支払いに上乗せするなどの提案があるかと思います。これらの条件は上記通達により、通常時より柔軟に対応していただけると思います。
また交渉する際には必ず信用情報がどうなるのかを確認しましょう。上記信用情報機関の対応により、信用情報に傷がつきにくいと思いますが、信用情報機関は「要請」をしているだけですので、実際どうなるかは、交渉しないとなんとも言えません。
また条件が良くない場合(特に消費者金融との交渉)は専門家に交渉を依頼したほうがいいかもしれません(専門家と消費者金融との交渉であれば、将来利息のカットが期待できます)
③「金融機関(特に消費者金融)との交渉がうまくいかないときや、今後収入の回復の見込みがなく、契約通りの返済ができない場合は、専門家に依頼すべき」
このような状況下なので、債務者本人の相談にも柔軟に対応してもらえますが、消費者金融などは、専門家が交渉したほうが好条件で返済できると思います(住宅ローンや奨学金などは債務者本人が交渉しても結果は変わらないと思います)。また借金を返済することが出来なくなり、破産や民事再生を検討している場合は必ず専門家に相談すべきかと思います(破産等は一般の方が手続するのは困難です)。
ただ専門家に依頼するデメリットはやはり信用情報に傷がつくことです。よって信用情報に傷をつけたくなく(今後マイホームを購入したい等)、収入が下がるのが一時的であるならば、専門家に依頼せず、債務者本人での解決を検討したほうがいいかもしれません。
借り入れの種類別の債務整理方法
最後にいくつか借り入れの種類別の債務整理方法を説明したいと思います。
・消費者金融(ショッピング及びキャッシング)
これらに関しては、信用情報に傷がついてもいいのであれば、専門家に相談して任意整理を依頼したほうがいいと思います。ただ、もちろん今回の件もあり柔軟には対応してもらえると思いますが、債務者本人からの申出では、専門家の交渉なら認めてもらえる将来利息のカットは難しいのではないかと思います。これらの借金は金利が高いので、できれば専門家に依頼して任意整理するのをお勧めします。
・住宅ローン
住宅ローンに関しては、支払いが遅れる前に借り入れ先の金融機関に相談するのが重要です。また上記カード会社と異なり専門家をいれて交渉しても、交渉結果にまず違いはないので、自分で交渉したほうがいいと思います。なお交渉しても今後の見通しが立たないようであれば、不動産の売却も検討することになります(いわゆる任意売却です。差押後の競売と比べ、高く売却できるなどのメリットがあります)。また住宅ローンのほかにカードローン等他の借金がある場合、民事再生手続きを採ると住宅ローンの支払いは従来で、マイホームを手放さず、他の借金の減免ができます。
また特に住宅ローンに関しては、遅滞しそうな場合必ず事前に金融機関に相談しましょう、遅滞してからでは、有効な対応が出来なくなる場合があります。
・奨学金(日本学生支援機構)
奨学金は、今回の件とは関係なく、支払いの猶予と減額の制度があります。今回の件でこれらの申請がしやすくなっているようです
(以下日本学生支援機構HP参照)
https://www.jasso.go.jp/sp/news/1327568_5021.html
・家賃
家賃は借金ではないのですが、念のため記載しておきます。家賃を一ヶ月分滞納した場合でも、よほどのことがない場合(大家と他の件でもトラブルがある等)、賃貸借契約は解除されません。また家賃を滞納した場合鍵の交換をするなどの警告されたとしても、それらは違法行為です(万が一された場合は、専門家に相談してください)賃貸借契約が終了するには当事者間の信頼関係が破壊されている必要があり(あくまで目安ですが、三か月分の滞納が該当します)、強制的に追い出すには、訴訟を経なければなりません。家賃を支払うことが出来ない場合、信頼関係を壊さないように、まずは支払いの猶予をお願いしてみたらよいと思います。
最後に
何度も言いますが、一番重要なことは絶対に滞納を放置しないことです。
もし現状どうすればいいかわからないのであれば、当事務所を含め専門家に是非ご相談ください。
必ずあなたの力になります。
司法書士 松尾孝紀
(注意:以上の文章は一般の方の債務整理を想定しております。自営業者などは別の対応が必要となることをご了承ください。)