民事再生
住宅ローン以外の債務を減額し、住宅ローンに関しては、これまで通りの支払いを続けマイホームにそのまま居住し続ける制度です。住宅ローンに関しては利息元金ともにカットされることはありませんが、マイホームにそのまま居住し続けられるメリットがあります。任意整理だと支払いができないが、破産でマイホームを失いたくないときに実務上使われます。
民事再生の手続の順序ですが①申立②個人再生委員の選任(札幌地方裁判所は選任しない場合あり)③開始決定④再生計画案の提出⑤再生計画の認可の流れとなります。④の内容に従い、⑤の認可後に支払いを開始するのですが、免責によって圧縮された債務額を、原則36回(毎月支払、60回まで延長可能)で支払うことになります。
債務の総額によって異なります。①債務総額100万円未満の場合はその金額(つまり債務が減らない)。②債務総額が100万円以上500万円未満の場合、100万円に減額③500万円以上1500万円以下の場合、債務総額の20%に減額④1500万円以上3000万円未満の場合、300万円に減額④3000万円以上5000万円以下の場合、債務総額の10%に減額した金額を支払う必要があります(なお個人民事再生は住宅ローンを除いた債権額が5000万円を超える場合は利用できません。)。ただしこれらは民事再生手続きにおける最低支払額です。民事再生には清算価値保障原則が存在し、現在所有している財産(例えば車、退職金、保険解約金)の合計額がこの最低支払額を超える場合はその金額の債務を支払う必要が出てきます。また給与所得者等再生では、可処分所得の2年分以上の弁済を求められるため、民事再生の弁済額が増える可能性もあります。
小規模個人再生が民事再生の基本類型で、給与所得者等再生がその特則です。
小規模個人再生は継続収入があり、債務総額が5000万円以下の方なら誰でも利用可能です。給与所得者等再生は、定期的な収入があり、その変動の見込みが少ない方が利用可能です。つまり、サラリーマンや公務員の方等、安定収入の方は給与所得者等再生が可能です。もちろん、サラリーマンや公務員の方等も小規模個人再生の利用もできます。一般的に給与所得者等再生を利用すると、債権者への弁済額が増えてしまうケースが多いですが、債権者からの同意(消極的同意)を得なくてもよいというメリットがあります。
任意整理と異なり、元金を免責できる点及びどちらも官報公告の対象となるのは同様ですが、①破産は原則債務が全て免責されるが、民事再生は一部免責される②破産は申立するのに支払いが不能であることが必要だが、民事再生は支払いが不能である必要はない③破産は財産を処分するのが原則だが、民事再生は財産の処分が不要④保険の営業や警備業等破産は職業上の制限があるが民事再生にはない⑤破産にはギャンブルや遊行費等で作った借金は免責できない免責不許可事由があるが、民事再生では借金の理由は一切問われません。