破産
家財道具は取り上げられませんし、全て財産を失うわけではありません。
破産法1条に破産法の目的は「(中略)債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。」とあります。つまり破産法は債務者が一定の水準以上の生活をできるようになっています。例えば実務上預金が20万円以内であれば処分する必要はありません。また家財道具は破産による処分の対象にならない取扱いになっております(破産法第34条第3項1項参照)。
破産特有のデメリットとして、①官報公告に名前が掲載されてしまう②警備員や保険の営業職につけなくなる(これらは一時的で、破産手続中のみです)などがあります。また管財事件になると自分あての郵送物が管財人宛へ転送されます(もちろん、管財人経由で書類を受領できます)。また裁判所の許可なくその居住地をはなれることが出来ないなどがあります(但し、出張などが多い場合先に相談しておけば問題にならないことがほとんどです)。
破産の手続き中、一時的(破産の開始決定から復権まで)につけなくなる、職業があります。例えば警備業や保険の営業マン、弁護士、司法書士のような士業も該当します。また会社の役員に就任されている方も破産すると一度退任することになります(会社法330条、民法653条2号)
破産手続において一部の債権を外して手続きすることが出来ません。もし破産の申立て前後に一部の債権者のみに借金を返済していた場合、破産管財人による否認権の行使(破産法 第162条第1項)によって返済分を破産管財人が取り戻す可能性があります。では兄弟からの借金は破産したら返済できないのかというと必ずしもそうではありません。破産手続開始後に自由財産から任意の弁済を妨げないとの判例もありますし(最判平成18年1月23日)、免責後の債務の法的性質は自然債務ですので、弁済は可能です。ただ、なかなか判断がむずかしいと思いますので、このようなケースは専門家に相談すべきだと思います。
債務者の収入によっては、充分可能かと思います。破産の申立てには「支払不能」であることが必要です(破産法第15条1項)。支払不能の内容については、法律に明記されているわけではないのですが、目安として毎月の支払い可能額の3年が債務総額を下回る場合だと言われています。仮に月2万円程度しか弁済できないのであれば、
36回×2万円=72万円<100万円(債務総額)
となり、支払不能となります。
月の弁済可能額は、所得やご家族の状況によって異なりますが、債務総額100万円(もちろんそれ以下でも)で破産は可能かと思います。
官報とは国の機関紙で、法律の公布や会社決算の公表が官報上でなされます。①破産の事件番号②破産者の住所・氏名③免責決定年月日④破産の免責の許可⑤管轄の裁判所が公告の内容となります。
官報は官報販売所のみで販売されており、一般の方はほとんど目に触れません。またネット上でも閲覧できますが、無料の場合は直近30日分の情報のみです。
ギャンブルによる借金は法律上免責不許可事由(破産法第252条第1項4号)に該当し、免責が認められないようにも思えます。しかし、免責不許可事由にあたる場合でも、裁量免責という制度があり、免責が認められております。実務上よほど悪質なケースでない限り、ほとんど裁量免責が認められております。
7年以内に破産による免責を受けた場合は免責不許可事由(破産法第252条第1項10号)に該当しますが、10年以上前であるなら該当しないので可能です。但し一度破産をしているので、破産管財人が選任される(つまり手続費用がより高額になる)可能性が高いと思います。
結論から申し上げると破産管財人がつくかどうかです。破産管財人が選任されると破産管財人に対する報酬も破産の費用に含まれますので、破産費用が高額になります(破産管財人の報酬は債務者が用意する必要があり、20万円以上かかります)。
大まかに説明しますと破産の手続きは①破産申立②破産開始決定③換価配当手続き④免責決定と進みます。ただ破産する場合、配当するような財産がない場合や免責不許可事由が見当たらない場合は、②と同時に③を経ずに破産手続きを終了してしまいます。これを同時廃止といいます(破産法216条1項)同時廃止に当たらない場合は②で破産管財人が選任され手続きを進めていくことになります。これを管財事件といいます。
破産申立後に裁判所が申立書類を確認し、破産開始決定前に判断します。管財事件になるかどうかは、換価する財産の有無・資産・免責不許可事由の調査の必要性などによって決まります。同時廃止か管財事件の基準ですが、換価する財産の有無に関しての基準はあるのですが(札幌地方裁判所では預金、現金、車など各財産の価値が20万円を超えない場合)、
資産や免責不許可事由の調査の必要性に関しては、必ずしも明確な基準はなく、同時廃止になるかどうかは申立後でないとわからないことがあります。
可能です。札幌地方裁判所は管財費用の支払いを6か月間猶予してくれます。もし払えない場合は破産申立を一度取り下げて、管財費用を準備後、再申し立てになります。
まず前提として、現在の仕事をすぐに退職しないものとします。札幌地方裁判所の基準によると退職金は8分の1の評価となるので、例えば退職金の見込みが200万円だとすると、25万円、生命保険は解約返戻金30万円とした場合、そのままの評価とみなされます。双方20万円以下なら換価する必要がないのですが、このままですと両方ともに破産の対象の財産となってしまいます。ただ、この場合、上記金額を破産財団(換価の対象となる財産です)に組み入れる方法もありますが、自由財産(破産手続によらず自分で処分できる財産のこと)の拡張(破産法第34条第4項、なお財産総額99万円までと)をすることで、特段の処置をとることなく退職金と生命保険を保全することが可能です(札幌地方裁判所の場合。なお自由財産の拡張は必ずしも認められるわけではありません。)
なお現在の仕事を退職する予定の場合、退職金は4分の3が差押禁止債権ですので、残り4分の1が破産の対象財産となります(破産法第34条第3項)。
破産はすべての債務が免責されるわけではありません。例えば租税や養育費は免責できません(破産法253条1項但書)。
債務者の状況によっては裁判所に行く必要があります。破産には「審尋」といって裁判官が債務者に対し直接事情聴取をする手続きがあります。札幌地方裁判所の場合必ずしも審尋を経るわけではないのですが、管財事件もしくは同時廃止相当だが免責不許可事由がある場合(ギャンブルで浪費した等の理由)は、この「審尋」のために裁判所に行く必要があります。審尋の所要時間ですが、30分もかからない程度かと思います。